風見梢太郎「収束作業」  石崎徹

 風見梢太郎「収束作業」  石崎徹

 今月号のピカイチ。文句のつけようがない。
 一般人には立ち入りさえ難しい原発内部、そこでの各種労働、それぞれ立場も収入も作業内容も異なる労働者、その労働者たちの日常生活、すべて過不足なく見事に描ききっている。
 いつも書きすぎて読者に叱られるぼくとしては大変参考にもなった。
 それぞれの場を少しずつ簡潔明瞭に描き、決して書きすぎず、あちこち横道にそれているようでありながら、すべてがつながっていく。読者を飽きさせない。
 おそらく膨大な取材によって得たものから、作品に不可欠な部分だけを取捨選択したのであろうと思われる。
 取材力もすごいが、文章力もすごい。
 現場からものを書くということの力も感じる。
 人物描写もよい。脇役にまで目配りがきいている。ほんの短い文章で描ききっている。決していい加減に済ませていない。すべての人物が生きている。
 良い作品については書くべきことはほとんどないのだが、一点だけ疑問をあげる。
 なぜ「例の政党」なのか。これが共産党であるということは読者には明瞭である。にもかかわらず、何故党名を明らかにできないのか。共産党は実際にはこういう活動をやっていないのか。それとも共産党がこういう活動をやっているということを公式に認めると差しさわりがあるのか。
 その二点に関する情報がぼくにないので、ここが理解できない。もちろん具体的な活動内容はフィクションだとしても、それに類似した活動を実際にやっているのだとしたら、堂々と共産党と名乗るべきではないのか。こういう活動をもちろん共産党はやるべきだし、実際にやっているとしたら、それをアッピールすべきなのだ。そうすればもっと力強い作品になっただろう。この疑問が残ったのが唯一惜しまれるところである。
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