「いたずら」  妹尾倫良

いたずら  妹尾倫良

秋の中頃 台風で
二階ベランダの襖がとんだ
汚れて穴があいて 近くの空地に落ちていた
取りもどして
裏の洗濯機の横へ立てかける

捨てるのは決めかねた
一枚だけの襖 あと一枚は
以前の住民が処分したのだろう

一週間後の月曜の朝
洗濯機を使う時 見たのは
空のひしゃげたマッチ箱 湿った軸木 数本
焦げたマッチの軸 十本ばかり
襖紙の燃えかす
燃えた部分は地面に近い
細い露地と車道に面した
洗濯機置場

次の日曜の朝
東隣の主婦が
小学二年生の 男の子の手をひっぱってきた
――すみません ウチの子がやったんです
  マッチを使いたかったんです 保育園児
  の妹がさっき教えてくれて すみません
  ウチはパパが吸わないので ライターも
  置いてないし まさかこんなことするな
  んて 考えもしなかった マッチはどっ
  かで拾ってきたらしいです  

――あれば使いたくなるね 燃えやすいもの
  を置いたオバチャンも悪かった

男の子は小さな声で ゴメンナサイをいった
今どき珍らしいマッチを見つけて 使いたく
なるのは心理かもしれない
襖は処分した
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