「新年にあたって」  鬼藤千春

新年にあたって       鬼藤千春

 大晦日恒例の紅白歌合戦にチャンネルを合わせて、テレビの前に座っていたが、私が考えていたことは、やがてくる新年のことである。二〇一三年がどんな年になるか、どんな年にしたいのか、ということどもだ。
 私の想いは大きく膨らんで、遠くを見るような眼でテレビの画面をぼんやりと見ていた。文学や健康、わが家の経済や生活のあり方、などが頭を過ぎっていった。
 生活の在りようの軸にしてゆきたいのは、「書くことと読むこと」ということであった。書くことといえば、まず日記を毎日綴ってゆくということである。小説の方は掌編小説を幾編かと短編を二つくらい書いてゆきたいというものだ。
 いま、一月を終えようとしているが、日記は四百字詰め原稿用紙にして、百五十枚の分量を書いてきている。一日平均五枚である。この日記の量は尋常ではないと思っているが、それは小説が書けないからだ。
 小説を書くということは、決して容易なことではない。まず「なぜ書くのか」、「何を書くのか」、「どのように書くのか」、ということをクリアしなければならないからである。言葉をかえれば、モチーフは、題材は、テーマは、創作方法は? ということを考えなければならないのだ。小説を書こうと思いたつと、まさに「寝ても覚めても」そのことを考えるようになる。自身の内部でそれが醸成するのを辛抱強く待つのだ。
 しかし、そんな辛い営為をしたからといって、いいヒントが天から舞い降りてくるわけでもないのだ。そこで小説が書けないから、やむなく私は日記を書いているのだ。謂わば、本業が芳しくないから、仕方なく内職をしているようなものだ。早く日記から開放されたいのである。
 読むこと、は書くことと切っても切れない関係にある。ほとんどの作家や評論家は、「いい小説を書こうと思えば、いい小説を沢山読むことだ」、ということを例外なく言っている。だから、いい本を一杯読むことが求められているのだ。が、私の友人は、「その歳になって今更本を読んでももう遅い。やめとけ」と手厳しい指摘をする。
 その通りだとも思う。遅きに失する、という気がしないでもない。たしかに青年時代には、「人間とは何か、人間はなんのために生きるのか」、という風なことを考え悩んでいた。したがって、感性も豊かで研ぎ澄まされていた。しかし、六十五歳にもなると、本から受容することが鈍感で限られてくるのはたしかだ。が、書こうと思うならば、あえて読まなければならないのだ。
 そこで新聞の連載小説を読むことも、私のひとつの目標にしたのである。いままで、この歳になるまで、新聞の連載小説を読んだことがなかった。単行本が発行されてから読めばいい、というのが私の考えであった。が、本にならない連載小説もあるから読んでおきたい、と思ったようなわけである。いま、「民主主義文学会」会員の須藤みゆきの「月の舞台」という連載を、一日も欠かさず読んでいる。
 そして、決して欠かせないことのひとつは、健康であるということだ。私の近しい人たちの中にも、健康を害している人がずいぶんと多い。そこで、ウオーキングをすることを心に秘めたのである。冬と夏は室内でウオーキング・マシンを使ってやることにしている。春と秋はもちろん室外へ出て、海や山の風景を眺めながら歩くのである。いまは、パソコンで高橋真梨子や山崎ハコの動画を視聴しながら、一時間のウオーキングだ。この一年、健康であることを痛切に願っている。
 新年を迎えて、新しい変化というのは、「まがね文学会」がホームページ(ブログ)を開設したということだ。これは会に活性化をもたらしている。私自身、年間に幾編かの掌編小説を書けばいいと思っていたのだが、このブログによって、毎月一編の掌編を書くことを心に期したのである。また、ある会員も自身の作品が掲載されたことによって、意識の変化があったようで、新しい提案を寄せてきている。彼ももっと作品を書いてみたいという希望を述べている。
 「まがね文学会」は、文芸誌「まがね」とブログという、発表の場をふたつ持ったということになる。そのどちらとも継続というのは難しいのだ。それでも「まがね」は三十数年発行してきて、試され済みであるけれど、ブログはこれからである。ネットでよく見受けられるのは、開設はしているが、それがなかなか更新されないということだ。それでは読者の信頼は得られない。私たちはこのブログを継続するだけでなく、豊かで充実したものにすることが使命となっている。
 最後に、「まがね文学会」のよりよき発展を願って新年を迎えたのである。会の目指すものは、単純化していえば次の通りである。つまり、一人ひとりの会員が、「よく読むこと」、「いい作品を書くこと」、そして、「仲間を増やすこと」である。そして、芸術と文学の民主的発展に寄与することだ。
 この一年が、「まがね文学会」と会員のみなさんにとって、いい年でありますようお祈り致します。
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