映画「少年H」  笹本敦史

映画「少年H」  笹本敦史

 古沢良太は「探偵はBARにいる 2」で反原発運動を揶揄する脚本を書いた。もちろん、運動を批判するのは自由だし、それについては見解の相違だと思うだけである。(例えば、クリント・イーストウッドの政治的立場にはまったく同意できないが、彼の作品には好きなものがいくつもある。そういうものなのだ)。しかし「探偵はBARにいる 2」がやったのは「批判」ではなく「揶揄」である。オリジナル作品ではないとは言え、それは許すことはできない。

 そういうわけで、古沢良太が脚本を書いた映画「少年H」を見るかどうかについては迷いがあった。
 原作は97年の発表当時に読んでいる。記憶に基づいて書かれたものであり、後付けの視点が入っていると感じられる部分もないわけではない。しかし、戦時の生活を体験した者として、どうしても書き留めておかなければならないという強い動機が、平明な文章に感じられた作品だった。

 結論から言えば、映画もすばらしかった。ハードカバーで上下刊という長い小説を2時間強の映画に仕上げた脚本は職人技と言えるだろう。原作を修正している部分も違和感はない。しいて言えば、Hの自殺未遂の場面はカットしても良かったのではないかと思う。あの場面は原作でも、唐突な印象を受けるところだ。
 映画的には空襲やその後の焼け跡のシーンに圧倒された。日本映画ではスケール感を出そうとして失敗する作品が多いように感じるが、さすが降旗康雄演出というところだろうか。
 観客は70代と思われる人がめだったのだが、体験として戦争を語れる世代が少なくなっているという現実を考えさせられた。
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